東京都立川市を本拠地にして活躍している、空の公認キャラクター、てるる。

てるるは、レイングッズと防災グッズの通販店『テルルヤ』の店長をしています。

たくさんの困難を乗り越えて、てるる店長はホームページを立ち上げ、さらにECモールの『Amazon』に登録することに成功しました。

そしてついに、テルルヤにとって初めてのお客様が、Amazonでレインコートを購入してくれたのです。

歓喜する、てるる店長。

さっそく丁寧に梱包して、お届け先の北海道に発送しました。

ただ、少し気になる点がありました。

それは商品の注文が来る前に、繰り返しの保留注文と中国語のメッセージがきていたことでした。




 

 

 

 

商品の発送を終えても、てるる店長のニコニコはとまりませんでした。

 

「はやく、ほっかいどうに、とどかないかなー! おきゃくさま、よろこんでくれるかなあ!」

 

それくらい、初めてのお客様というのはうれしいものでした。そしてまたそのお客様が、リピーターとしてテルルヤに訪れてくれたら、こんなに幸せなことはありません。

翌日も、そんな幸せを想像していた時のことです。

Amazonから通知がきました。

 

「え!? ま、またちゅうもんが、はいってる!」

 

なんと、連日の注文が入ったのです。

てるる店長は驚きに驚きました。まさか続けて注文が入るとは、夢にも思ってなかったのですから。

 

「すごいなあ! さすがAmazonだなあ!」

 

知名度というのは、すごいものです。テルルヤのような立ち上げたてのお店にも注文がくるのです。

今度の発送先は愛知県でした。

注文がきたのは、前日に売れたのと同じレインコートです。

てるる店長は梱包をして、すぐに商品を発送しました。

順調です。なんて順調なんでしょう。この分だと、他の商品も売れるのは時間の問題に思えました。その夜、てるる店長は興奮して、あまり寝つけませんでした。

 

次の日です。Amazon上にある、テルルヤのページを見ました。すると、お客様からテルルヤに対しての評価がついていました。

そこには、こう書いてありました。

 

『最悪です!!!』

そして、評価は1の最低評価。

 

「え?」

 

意味が分かりませんでした。

何か、不備があったでしょうか。

てるる店長は、ゆうパックで、最初に送った商品の追跡をしました。

北海道の郵便局には着いていましたが、まだお客様の手元に届いていないようでした。

いったい、どういうことなのでしょうか。

最初のお客様に不備があったのかと思いましたが、そもそも商品がまだ届いていないのですから、不備もなにもないと思います。

てるる店長は悩みました。てるるな事務局のてんちゃんにも相談をしました。てんちゃんは、怪しがっていました。

てるる店長は、てんちゃんのアドバイスもあり、北海道の届け先の住所をGoogleマップで調べました。そこには、とても住居とは思えない建物がうつっていました。

その時です。なんとまた、注文が入ったのです。

 

「ええ……」

 

注文の商品は、またもや同じレインコートでした。これで、3日連続の注文です。

そして届け先は、沖縄県。

Amazonは配送料が商品によって固定となっています。テルルヤの所在地、東京都から遠ければ遠いほど、足りない配送料をテルルヤが補填しなければなりません。

つまり、北海道と沖縄県は、テルルヤが負担する配送料がかなり高くなるということです。

 

てるる店長は沖縄の発送先をGoogleマップで調べました。

案の定、人が住んでなさそうな建物がうつっていました。昨日の愛知県の発送先も調べましたが、これも、同様でした。

てるる店長は、ドキドキがとまりませんでした。興奮するドキドキではなく、悪いことが起こっているかもしれないという、ドキドキでした。

沖縄県には発送するのをやめようかと思いました。しかし、まだ事が起こっているわけではありません。たまたま、三箇所とも住居っぽくないだけかもしれない。悪評価の件との関係性を疑ってしまいますが、全く関係のないことである可能性もあるわけです。

てるる店長は、悩みに悩んだ結果、沖縄県に発送することにしました。お客様からの支払いも済んでいますし、送らないわけにはいかないからです。

 

翌日、ゆうパックのサイトで、北海道に送った商品の追跡をしました。

まだお客様の手には渡ってないようでした。

そしてしばらく経った後、『差し出し人に返送』と追跡の表記が変更となりました。それは、届け先の住所に、お客様はいなかったということを、あらわしていました。

二つ目の愛知県、三つ目の沖縄県も、ほどなくして『差し出し人に返送』となりました。

 

さらに同時に起こったことがありました。

返送されたのと同じレインコートの全てのサイズ、カラーが『保留注文』となったのです。

『保留注文』は『取り置き』と同じ意味なので、保留されている間は他のお客様に売ることができません。テルルヤは在庫を1商品につき、1つか2つしか持っていません。ですので『保留注文』されていると、その商品は売り切れ状態になるわけです。

 

「……」

 

てるる店長はしばらく、言葉を発することができませんでした。

なぜ、こんなことになったのだろう、それすらも考えることができませんでした。

 

それでも、何か対処をしなくてはなりません。

てるる店長は自らを強引に奮い立たせ、まずは保留注文をキャンセルしました。

しかし、キャンセルしてもキャンセルしても、すぐに保留注文をし直されてしまいます。

さらに続けざまに、事が起こります。

テルルヤの評価のところに、また新たなコメントが何件かきたのです。

内容は、商品が届いたけど、ぐちゃぐちゃだったとか、梱包がむちゃくちゃだったとか、対応が最低だったとか、二度と頼まないとか、ここでは書けないくらいの、嘘ばっかりの悪口の数々でした。

もちろん、全て最低評価です。

てるる店長は泣きたくなりました。

なぜ、こんな目にあわなくてはならないのか。

ただ丁寧に商品を届けたかっただけなのに。ただ、晴れやかさを届けたかっただけなのに。

 

てるる店長の心は、晴れやかさと正反対の、どしゃ降りでした。




 

 

どしゃ降りの心のまま、初めてきた注文を、キャンセル処理することにしました。

しかしこのキャンセル処理も、一筋縄ではいかなかったのです。

 

つづく